プロジェクトニュース

2026年08月07日

「島根県SIB 誰もがデジタルで自立する教育就労支援ファンド」出資説明会・記者会見を開催しました

平素よりエントライをご利用いただき誠にありがとうございます。

2026年7月29日より出資者募集を開始した「島根県SIB 誰もがデジタルで自立する教育就労支援ファンド」について、
2026年7月31日(金)に島根県SIBの出資説明会・記者会見を開催いたしました。
島根県SIBの概要プロジェクトやプロジェクトの詳細、出資手続きの流れについてもご説明し、質疑応答も行いました。

ご参加が叶わなかった方はぜひご視聴いただきますようお願い申し上げます。
ご参加いただいた皆様もお聴き逃し等ございましたらご覧いただけますと幸いです。

▼出資説明会の動画はこちら
https://youtu.be/J5Ps0-lo2XQ


質疑応答

「ソーシャルインパクトボンド(SIB)」の仕組みにどのような価値をおいておられますか?

RoboCo-op 金代表
SIBの先駆けとなったのは、イギリスにおける「再犯防止プロジェクト」の事例です。それを紹介したTED Talksを約15年前に見て、それからずっとSIBをしたいと思っていました。
再犯率が高いという社会課題において「効果がでるかわからない事業に税金を使えない」と悩む行政と、「解決の手段はあるけれど予算が足りない」NGO・NPO、そして「私財を投じても社会課題を解決したい」という投資家・篤志家の三者をつないだのが「SIB」という仕組みです。実際に再犯率を9%減らすことに成功し、これまでお金が循環しづらかった「再犯防止」領域に資金の巡りが生まれるという価値が証明されました。
※SIBについて紹介されたTED Talksはこちら(投資で社会変革を/トビー・エクルズ)
※イギリスにおけるSIBの事例の詳細はこちら(新・公民連携最前線より)

また、教育や就労といった複雑な支援現場では関係者が多く、どうしても支援が分断されてゴールがズレがちです。

しかしインパクトボンドは、金融の「債券」という言葉でありながら、共通の目標に向かって関係者同士を強く「結束(ボンド)」させるというコンセプトにも価値を置いています。SIBでは成果の達成に向けて、様々な民間事業者が連携していくことになります。

現在、急激なAIの発展によってリスキルやスキルアップの重要性が高まっております。一方で、依然として社会課題は山積し、行政の予算は逼迫しています。
SIBという仕組みでは、成果が出なければ支出されない「ワイズ・スペンディング(賢い支出)」ができるため、行政は税金の無駄を避けることができ、我々事業者も新しい社会課題へチャレンジする機会を得ることができます。
加えて、この仕組みは温かいご縁の循環をもたらします。Robo Co-opは「人の連帯」が重要であると考えており、そういった意味でも、本事業を通じて同じ背景を持つ人、島根県よよくしたい人等がつながることが重要であると思っています。また、クラウドファンディングを掛け合わせることで、地域外にいる人々も島根を応援する「関係人口」としてつながれることが画期的だと思います。

今回の取り組みは、SIB、企業版ふるさと納税、キャリアインパクトボンドなど、さまざまな側面でつながりをつくる「ボンド」であり、ご縁がめぐっていくといいなと思っています。

エントライの他のプロジェクトと比較して、今回の資金調達規模は大きいと考えてよいでしょうか。

プラスソーシャルインベストメント株式会社
私たちエントライが他の地域で手掛けてきた複数のソーシャルインパクトボンド(SIB)事業と比較すると、今回の「島根県SIB」は規模が大きめの設計になっています。
これまで私たちが関わってきたSIB事業は、「街づくり型のコミュニティビジネスの立ち上げ支援」や「地域活動の協働プロジェクトの創出」など、
かなりローカルなコミュニティレベルのプロジェクトが中心が多くなっているためです。

一方で、SIBの枠組みにこだわらない一般的な「投資型クラウドファンディング」のファンドと比較した場合には、3,000万円や6,000万円といった大きな規模で多くの出資者をファンとして巻き込みながら展開しているプロジェクトも多数あります。
資金の調達規模はそれぞれの事業内容に応じた適切なサイズがありますので、単純な金額の大小だけで良し悪しが決まるものではないと考えています。

出資者情報は第三者に開示されるのでしょうか。

プラスソーシャルインベストメント株式会社
ご出資いただいた皆様の個人情報および出資者情報につきましては、一般の第三者に開示または公開されることは一切ございません。
ただし、本ファンドの営業者であるロボコープ様および事業の委託元である島根県様には、出資者情報が共有されます。
さらに、本ファンドで用意されている投資家特典をRoboCo-opより配送する際や、それに伴う必要なお手続き・ご連絡をスムーズに行う目的でRoboCo-opより出資者の皆様に直接ご連絡させていただく場合もございます。

償還原資は、島根県からの委託費となるのでしょうか。

プラスソーシャルインベストメント株式会社
ご発言の通りです。今回のスキームでは、目標とする受講生の「全員が就労を達成」した場合、最大840万円の分配金が発生しますが、この資金の原資は、「成果連動型」として島根県から支払われる業務委託費となります。
出資者の皆様への分配金は、この業務委託費を原資としてお支払いいたします。

出資特典である「カジュアル面談」とは具体的にどのような内容になっているのでしょうか。また、具体的にいつ頃から利用できるスケジュール感になるでしょうか。

RoboCo-op 金代表
私たちRoboCo-opは、普段から大企業からスタートアップ、地方自治体、さらにはNGOに至るまで、幅広い組織におけるAI活用やDX支援を行っています。
その中で、多くの企業や組織が「社内でAIを導入したいけれど使い方が分からない」「そもそもどういったデジタル人材を採用すればいいのか、自社のニーズ自体が定義できない」という深い悩みを抱えているのを実感してきました。

そこで今回、100万円以上の大口出資をしていただいた企業や組織様を対象に、私が直接行う「無料AIコンサルティング」を特典としてご用意いたしました。
さらにあわせて、本プログラム受講生の「無料お試し雇用」の機会も提供いたします。

これは単に「卒業生をお試しで使ってみてください」と現場に丸投げするものではなく、私たちRoboCo-opがしっかりと伴走し、最終的な雇用(就労)に繋がるよう徹底的なサポート体制を構築します。
「こういう課題があるなら、この順番で取り組みましょう。ではまず1ヶ月、卒業生と一緒に試してみましょう」という具体的な提案から並走させていただます。
投資家特典の具体的なスケジュール感といたしましては、受講生がカリキュラムを終えて卒業した後の展開になります。
そのため、本事業の研修期間が終了(事業終了)した段階から、特典の提供がスタートする予定です。 

現在、受講生の募集を行っている最中とお伺いしていますが、選考や応募の状況について教えてください。

RoboCo-op 金代表
現在、すでに定員10名を超える11名の方からご応募をいただいており、私たちはまさにこれから10名を選定していく本格始動のタイミングにあります。

今回応募してくださった方々の中には、「新しい分野へのチャレンジに集中するために、生活支援金があれば本当に助かる」と、生活資金の支給を強く希望されている方が多数いらっしゃいます。
子育て中の方や、パートタイムの仕事を掛け持ちしている方が、働きながら新しいデジタルスキルを身に付けるのは、時間的にも精神的にも非常に困難です。
そこで今回のプログラムでは、最初の3ヶ月間におよぶ座学期間において、特に選定された3名の方に毎月20万円の生活資金を支給する設計にいたしました。
生活の心配をすることなく学習に完全集中できる環境を用意することで、就労の成功率を飛躍的に高めることができると考えています。

また、サポート体制についても非常に強固なものを用意しています。
ロボコープの既存の卒業メンバーたちが、今回の受講生にコーチやプロのマネージャーとして伴走します。
さらに、カリキュラムには実際に働きながら学べる有償の実践訓練である「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)」の予算も確保しており、OJT期間中の給与も受講生にしっかりと支払われます。

このように、困難な状況や多様な背景を持つ方々に手厚いサポートを提供し、修了後はデジタル人材として羽ばたいていけるよう、どこを切り取っても「社会的インパクト」が生まれるよう緻密に設計されたプログラムになっています。

島根県の「デジタル戦略室」が本事業をSIBとして採択された背景には、地域としての強い課題感があったからこそだと思いますが、「デジタル人材育成の必要性」について改めて背景を教えていただけますでしょうか。

島根県 デジタル推進室 白岩様
現在、私ども島根県が置かれている状況そのものが、非常に大きな危機感の源泉となっています。
島根県は現在、全国の中でも人口減少が極めて激しく進んでいる「課題先進県」です。
労働人口が急速に減少する中、私たち県職員の採用規模自体も縮小を余儀なくされています。
これは県庁内に限った話ではなく、県内のあらゆる民間企業や日常の職場で全く同じことが起こっています。

労働力が減り続ける中、これまでのやり方をそのまま続けていては、山積する地域課題を解決することも、日々の業務を遂行することすら不可能になります。
そうした厳しい状況下において、「物理的な距離の制約を超える」「業務を効率化する」というデジタルの力は、まさに現状を打破するための突破口になり得ると確信しています。
だからこそ、まずは身近な課題を解決するために、デジタル人材の確保が急務であると感じているのです。

また、もう一つの軸として、島根県では「地域社会DX」の推進に取り組んでいます。
地域の課題をデジタルで解決していくため、国の政策とも歩調を合わせながら動いていますが、ここで最も大切なのは「地域で活躍し、デジタルを扱える人材の育成」と、私たちと共に地域を良くしていく「仲間作り」です。
今回のSIB事業を通じて、単にITスキルを学ぶだけでなく、島根の地域のために主体的に活動してくれる仲間を増やしていけることは、島根県にとって非常に高い価値がある事業だと考えています。

パートナーであるRoboCo-op様も「島根でこれだけ成功できたのだから、子育ても生活もここで続けたい」と思ってもらえるようなインパクトが地域に根付くよう、地域財団やNGOの皆様とも連携し、次のステップへと繋げていきたいと、温かい想いを語ってくださっていました。

事業の金額規模の決定方法について。どの要素が制約となったのでしょうか。また、もしその制約がなければ、事業規模はどの程度まで大きくできるとお考えでしょうか。

RoboCo-op 金代表
キャリアインパクトボンドの設計において、受講料を無料にするだけでなく、受講生への生活支援金も支給することは極めて重要ですが、これには当然ながら多額の予算が必要になります。
私はこれまで10年近く、様々な自治体とSIBの仕組みの交渉を重ねてきて、ようやく今回、島根県で実現させることができました。

しかし、あまりに最初から規模を大きくしすぎると行政側の予算承認が下りず、プロジェクト自体が立ち上がらないというリスクがあります。
そのため、今回は行政側の予算承認を得やすいバランスを考慮し、「生活資金の支給対象は3名(3ヶ月間、毎月20万円)」、全体予算としてのOJT枠は受講生全員分を確保、という規模に設計しました。
これでも地方自治体の一事業としては非常に画期的な内容ですが、やはり予算のキャップ、特に生活支援金の原資が、スケールさせる上での大きな制約となりました。
ですが、この生活支援の手厚さがあるからこそ、受講生が本気で学習に集中でき、就労の成功率が格段に上がるという強いメリットがあります。

もしこの制約が一切ないのであれば、事業規模は大幅にスケール可能であると考えています。
先行するアメリカでは、コロナ禍に「ソーシャル・ファイナンス」という中間支援組織が、キャリアインパクトボンドを数十億円規模で組成し、大規模な就労支援を展開しています。
日本でも「デジタル田園都市国家構想」が掲げられていますが、特に人口減少が進み、少ない人数でインフラや地域社会を支えなければならない地方において、デジタル人材を育成することは急務です。
このモデルを全国各地に横展開していくポテンシャルは十分にあります。
将来的には海外のように5億、10億といった大規模なファンドを組成し、大きなリターンと社会的価値を同時に生み出すモデルに育てていきたいと考えています。

島根県として今回の事業を予算化し事業化するうえで、一番の壁は何だったのでしょうか。組織的な問題など色々あるかと思いますが、制度や法律の面などで直面した課題があれば教えてください。

島根県 デジタル推進室 白岩様
予算化にあたって私どもが最も苦労したのは、実は制度や法律の直接的な問題というよりも、庁内で「SIB」という非常に複雑な仕組みそのものを説明し、理解を得ることでした。
私自身、最初にこの仕組みを理解するだけでも相当な時間を要しましたし、その仕組みを行政の枠組みに適切に落とし込み、予算として承認を得るまでの説明プロセスが最もハードルの高い壁となりました。

制度面で直面した具体的な課題としては、行政が抱える「単年度主義(会計年度が単年度で終了し、翌年度への繰り越しが原則として難しいというルール)」が挙げられます。
就労支援や人材育成といった社会課題は、本来であれば数年単位の中長期的なスパンで取り組むべきテーマです。
しかし、行政予算の都合上、どうしても単年度(1年)という限られた枠内で成果目標を切り分け、評価基準を設定しなければなりませんでした。
この短い期間における「制度設計」と「事業目標の設定」をいかにクリアするかという点には非常に頭を悩ませましたが、多くの理解と協力を得てこれを乗り越えたことで、事業を開始することができました。

今回の事業は、まずは単年度で成果を測定するモデルからスタートしています。
この点について、パートナーであるRoboCo-op代表の金さんからも、「単年度主義における予算の繰り越しの難しさは確かに課題であり、就労支援型SIBのグローバルな標準では、受講生の就労定着や成果を評価する期間を18ヶ月など長期で設定するのが一般的である」とのご指摘をいただいております。
その上で金さんは、「今後は日本でも『基金』のような仕組みをうまく組み合わせて、中長期で予算を回していけるような制度設計を検討していくのが、次の良い展開になるのではないか」と仰ってくださっています。